音楽のお話

2017年、立ち直れないくらい衝撃を受けたアーティスト/アルバム6選

JETZE.NET

ジェッジジョンソン藤戸です。2018年が始まりました。

今年はジェッジジョンソンのアルバムが!発売!される!はず!多分!!

※本来は2017年発売予定でした大変申し訳ございません。

昨年2017年は、とにかく「音楽を聴きまくった年」になりました。映画音楽は業務上もちろんのこと、環境音楽やノイズまで、新しい音楽も今まで聴かなかった音楽も、とにかく聴きまくりました。聴きまくって多くの素晴らしい音楽を発見しました。ひとえに定額制音楽サービス凄い。Apple MusicもSpotifyもギンギン使っています。3,000円でどのCDを買うか泣きながら選んでいた人間としては月額1,000円程度払えば当時買えなかった(=聴けなかった)音楽を聴きまくれる。新しい音楽も聴きまくれる。リスナー的にはこれほど素敵なサービスは有りません。

音楽業務だけで暮らしているプロのアーティストとしての意見は真逆です。これ、宣伝資本の有る芸能系事務所に所属しているアーティスト以外は相当厳しい世界になるでしょう、というかもうなってますね。Apple MusicもSpotifyも「音楽を聴く側」にとっては大変素晴らしいサービスですが、「音楽を作る側」にとって地獄のようなサービスです。レコード会社との配分条件で異なりますが、Apple MusicもSpotifyで1曲が30秒以上聴かれると(30秒以下は聴いたという扱いにならない)大体0.8円の収益になります。10曲入りの最新アルバムをリリースして、1人のリスナーが年間平均して2日で5曲を聴いて貰っても

0.8円×5曲×180日=720円

インディーズや駆け出しのアーティストは、iTunes Storeなどのダウンロードサイトやパッケージ版を買って頂かないと「やがて死に至る数字」です。旧譜はアリだと思いますが、資本が強く宣伝力を持つ芸能系事務所に所属していないミュージシャンは新譜をApple Music/Spotifyで流したら即死です。駆け出しのバンドならApple Music/Spotifyで配信する事自体をプロモーションの一環と割り切る覚悟が必要です。

本題。

リスナーとしては最高のサービスなApple Music/Spotify、月額以上に使い倒しています。

1・好みの音楽に出会うまでの金銭的ハードルが低い。

2・巨大な「音楽の海」にも関わらず、好みの音楽に出会う(見つける)までの導線が短い=探す労力と時間が短い。

もう掘って掘って掘りまくってます。邦楽の旧譜もバンバン追加されてるし、洋楽はもっと充実してる。15年前は並行輸入でしか手に入らないエレクトロニカの名盤もドッサリ。アメリカと日本では配信されている曲の数がケタ違いということもあり(アメリカのアーティストはアジアにリージョン配信を行っていない人が多いので、ハリウッドから日本に戻ってiTunesのリージョン設定を切り替えた途端、Apple Musicが空になるという惨劇を経験しましたが)、そしてサジェスト機能が大変に優秀なため、通常なら大手のプロモーションの影に隠れてしまう「秀逸なアーティストや楽曲」にバンバン出会えます。HMVやテクニークでヴァイナルやCDを漁っていた「あの感覚」です。しかも試聴が簡単というか月額制なので聴き放題。

そんな中で2017年、ハリウッドで暮らしながら聴きまくっていたアーティスト/アルバム6選です。選考基準は、これから日本でも大規模プロモーションが始まるであろうアーティストということ(一部ベテランも居ますが)、そして何より、音楽でお金を稼いで生活しているプロのミュージシャンである僕自身が凹んで絶望感に突き落とされるぐらい衝撃を受けたアーティストという2点です。いやもう凹みますよこんな才能を見せつけられたら。でも大好き。こんな音楽と出逢えたのも何かの御縁、皆様もココがキッカケとなって「大好きな音楽」に出逢えますように、個人的趣味ながら御紹介させて頂きます。

【2017年、衝撃を受けたアーティスト/アルバム6選】

その1・Yaejiの「EP2」

※画像リンク:BBC NEWSより

日本でも宣伝が始まってるようなので一部の方は存じているかと。もう初めて聴いた時、とんでもない衝撃を受けました。しかも24歳!とんでもない才能が現れたなぁと。トラックの音色セレクトが秀逸過ぎる!そして耳に残るラップのリフレイン!ロスのカフェで流れていて凄い耳に残ってて、Apple Musicのプレイリストで改めて聴いてノックアウトされました。

NY在住の韓国人ラッパー/トラックメイカー。「Yaeji」の読み方は日本では「イジ」とか「イージ」で紹介されてるようですが「(素早く)イェジ」と聴こえます。何度も言いますが24歳でこの音と「揺れ」を作るのか。恐ろしい。アメリカでは大きなエージェントと契約されたようなので、今年はもっとサウンドを聴くようになるかな。愉しみなアーティストです。

余談ですが20歳-30歳の韓国人と台灣人の方々の言語力/一般教養力、ほんと素晴らしい。ロスで出会う留学生も観光者も英語カンペキ。国際競争力の違いをアメリカで痛感しました。

その2・Fjordの「BLUE」

カナダの2人組ポップユニット・Fjord(フィヨルドって読みます)のシングル収録の「BLUE」、初めて聴いて「声の美しさ」に殺された。しかも女性かと思っていたら男性!!!まじか!!!声が良質なメロディを更に惹き立てる。楽曲のアレンジも素晴らしい。息がかかりそうな目の前で歌っているミックス、とても大好き。基本情報が少なくて活動詳細が全くもって不明です。あとバンド名のせいで・・・(後述)。サウンドがプロの仕業なので、単発プロジェクトっぽいなとも。

アルバムとしてはリリースが無く、2016年に発表したシングル集のみですが、今後がとても愉しみです。ちなみにこの人達、自身達のFacebookに「俺らのバンド名さ、Googleで検索すると”自然のフィヨルド”がいっぱい出てきて(涙)」みたいな愚痴を書いていてお茶目な感じでした。

その3・RACの「EGO」

料理の別人・ハリウッド編の中でも紹介した「RAC(アール・エー・シー、通称ラァク)」です。2017年グラミーの最優秀リミックス・レコーディング賞を獲得して知りました。「これからの時代の音」がします。年齢高めの方が聴くと「古き良き懐かしい音」に聴こえるはず。アナログシンセとアナログドラムを多用して、シンプルな80年台後半のダンスグルーヴを現代風にアレンジしながら、良質なメロディを聴かせるところがホント凄い。耳に残るという事は凄いことんですよホント。

特にこのシングル「THIS SONG」がホントに素晴らしい。それはそうと音楽のMVの主流が歌詞を表示させて簡易な映像もしくは画像のみの「リリック・ビデオ」一色になりましたね。海外のアーティストは画像だけ付けてデモやサンプルもYouTubeにUPしてます。YouTubeで音楽を聴くという行為が根付いた現在では正しいプロモーションだと思います。映像も音楽もYouTubeですわよ姫。

その4・カシミア・キャットの「9」

アリアナ・グランデへの楽曲提供など、飛ぶ鳥を落とす勢いのカシミア・キャット。もう30歳になったのか未だ30歳なのか、取り敢えず彼のアルバムはアーティスト必聴です。RACとはまた違う「これからのサウンド」を鳴らしてます。簡単に言うと「音圧突っ込んでないのに音量が大きく聴こえて、かつ奥行きのあるサウンド」です。一連のアーティストも同様のサウンドを鳴らし始めてる。このアルバム、Apple MusicのAACコーデックでも凄いレンジが広く聴こえる。ビビって、そして凹んだ。凄い。端正なルックス(王子様っぽい)も最高。単に趣味の顔です。お前は何を言ってるんだ。

収録曲「9」はデンマークの人気シンガー・MØ(ムーって読む)が歌ってます。MØ、以前もなんかのライヴ映像で思ったんですけど殺人的にリズム感が無い方で、今作のライヴ映像でもリズム感の欠落したダンス(アクションというかヤンキー踊り)をフルレバレッジで見せてくれてます。映像自体の音ズレを考慮してもあまりにヒドい。でも大好きなシンガーです。パンチのあるカッコイイ声してます。

その5・Hammockの「COLUMBUS(映画サントラ)」

もうね、敗北です。神の音です。何をどうしたらこんな優しく、温かい音色が作れるのか。僕の追い求める究極かつ最高のサウンドをいつも聴かせてくれます。そしてホント悔しくて、そして美しくて涙が出ます。

アンビエントミュージック/ドローンミュージックの代表格・Hammock(ハンモック)がインディー映画「コロムバス」に書き下ろしたサウンドトラックです。好みが分かれる映画ですが僕は結構好きで、かつハンモックの楽曲が叙情的な映像に溶け込んで、本当に素敵でした。

ハンモックは15年前から名前を知らずにずっと聴いていたというアーティストです。音と名前が一致してからはApple Musicで一番のローテーションです。とにかく「癒やし」であって「崇高なサウンド」です。リラックスを超えて涙が出る。クリエイターなら絶対に辿り着きたいサウンドであり、僕がソロプロジェクト「バティウス」で目指すサウンドは、彼らと同様「音で世界を包み込む」ことです。エイフェックス・ツインから脈々と続くアンビエントミュージックの正当な系譜がここに詰まっています。

ハンモックは上記のような簡素とも耽美ともとれる映像、もしくは画像1枚貼り付け動画をYoutubeでほぼ全楽曲をUPしています。前述のように音楽試聴の主戦場がYouTubeの現代において、自身の音楽を伝える手段として的確な行いだと僕は思います。ジェッジも今年、開設したYoutubeアカウントにデモやサンプルをUPしていきます。目的は音楽を届けること。僕の中には最近まで無かった手段だった。これでいいんですよね。

ラスト6・THUNDERCATのアルバム「DRUNK」

ヤヴぇ。マジでヤヴぇ。2017年個人的ベスト・アルバム・オブ・ジ・イヤーにして最重要アルバムです。

超絶ウルトラテクニックのベースが生み出すとんでもないグルーブ。ファンクやソウル、ジャズ、フュージョンだけじゃなく、チープエレクトロも取り込んだ圧倒的なサウンドアレンジ。一聴すると70年代ソウル&ファンクなんですが、音質は間違いなく2010年後半の音。もうね、全てに於いて衝撃でした。前作も凄かったし、何より天才フライング・ロータスの大傑作アルバム「You’re DEAD!」で披露した超絶ベースに度肝を抜かれたのに、更にとんでもない音を聴かせて下さいました。ハリウッドの同僚が「スクエアプッシャーがブラック・ミュージックに傾倒していたら恐らくこうなって居たんじゃなかろうか」と。たしかに。

上の映像、開幕10秒で昇天です。

以上2017年、個人的ベスト・アルバムでしたが、今回のブログが新しい音楽に出会うキッカケになったら、音楽だけで生活をしている私、というか音楽に従事する私達はとてもうれしいです。よき出会いがありますように。ジェッジジョンソンもよろしくお願いします。

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