料理の別人ハリウッド編

料理長!ハリウッド暮らしです!【4】~忘れていた「音楽の景色」を観た~

JETZE.NET

ジェッジジョンソン藤戸です。4月になりました。ハリウッドと日本は緯度がおなじぐらい。気温の推移は春ぐらいまでは東京と同じ(※1)くらいだそうです。4月以降は日光が痛いぐらいギンギンになってくるとのこと。生きてられるのか自分。


(※1)日本の平均気温とロスの気温の比較表とかネットに転がってますが、そもそも地域によって寒暖差の激しい日本の平均気温でロサンゼルスと比べるのは大きな間違い。比較するなら東京や大阪など主要都市で比較しないとダメだよなぁ、と。いい加減なサイトが多いというか、「ソース丸パクリ」のサイトがチラホラ。ソース元が間違った比較手法で、そのまま広がった感じがプンプンします。

アメリカは車社会です。車が無いとむちゃくちゃ不便。鉄道・地下鉄はロサンゼルスの一部分しかカバーしてないのです。高級住宅街で有名なビバリーヒルズや、ファッション&カルチャー関係が多く立ち並ぶメルローズ・アヴェニューには地下鉄が通っていません。歩いて向かうと1時間コースです。レンタサイクルという手も有りますがおやめ下さい疲労で死にます。

ちなみにタクシーですが、日本と大きく違って「空車」で走っているのは稀です。まず走ってません。タクシー自体が少ないし、ホテル近辺にしか待機してません。Uberは数回ほど手配しましたが、アレぶっちゃけ危険だなと思いました。身元がよく判らない運転手にボラれたり、殴る蹴るの暴行を受けたりと最近はトラブルの話しか聴きません。責任の所在もはっきりしないし、なんか安心できないシステムだなぁと。 4月現在、プリウスを購入しようと捜索中です。中古だと日本円で約80万円くらいのが転がってます。結構安い。車が無い僕の移動手段は「同僚の車に乗せてもらう」か「地下鉄+徒歩」です。職場までは同僚の車、昼休みや帰りは寄り道したいので地下鉄で移動してます。

昼休みや休日はハリウッドや近郊を歩き回ってます。目に映るモノ全てが新鮮。映画音楽のプロダクションに所属してるということもあって、映画は経費計上が許されてるので、経理にレシート渡せば戻ってくるので実質見放題。ただ、当然ですが字幕はありません。何言ってるか判んない箇所がいっぱい。脳ミソ使わないアクション映画はまだ良いんですが、アカデミー獲った「ムーンライト」とかになるともう、独特のスラングが出てくるので厳しい。

ワックスミュージアムです。日本では「マダム・タッソーの蝋人形館」として超有名。

なんかもうコテコテの「ザ・ハリウッド」感がMAX過ぎて逆に入りづらい!

ハリウッドのど真ん中・チャイニーズシアターの入り口には、シネマスターの手形とか足型のアレがいっぱい有ります。写真は藤戸家に於ける皇室アルバム「STAR WARS」の上級執行役員3名。ハリウッド着いた初日に真っ先に探して見つけた時、何故か涙が溢れました。自分、本当にハリウッドに居るんだって。実感が湧き始めたのは4日後にハリウッド・サイン(ハリウッドのあの看板)を間近で観た時でした。

映画好きの家族に産まれ、小さい頃からたくさんの映画を観て育って、大好きな映画に、しかもまさかハリウッド映画の音楽制作に携われるとは。ブログ前述の業務一覧をこなす毎日で手に入れている経験値は、僕のキャリア/人生に於いてかけがえのないものばかり。

効果音制作/BGM制作が一番楽しいですが、最近はディレクション/プロジェクトマネジメントが並ぶくらい楽しい。自分が働くプロダクションに依頼として入ってくる映画音楽やCM音楽を、その内容にあわせてプロダクション内のチームごとにアサインしたり、楽曲の方向性の指示をします。オーケストラなのかロックなのかアンビエントなのか、僕が指示をしてアサインします。なかなか楽しい。

言語特有のニュアンスの齟齬から、指示通りに楽曲が上がってこない事も多々有りました。例えば英語で「Clear(クリア)」。透明とか澄んでいると直訳されるじゃないですか。その訳のイメージのまま、楽曲の方向性で伝えたりすると齟齬が生まれたりしました。あとは「Silky(シルキー)」とか。

で、本題。

映画音楽に関わってから、古いミュージカルの音楽やビッグバンドを聴くようになりました。特に60年代の音楽は勉強する事が多いです。60年代は映画と音楽が高いレベルで融合し、「サウンド・オブ・ミュージック」や「メリー・ポピンズ」などに代表される、いわゆる「ミュージカル映画」が栄華を極めた年代です。と、この話は凄まじく長くなるのでまたの機会に。映画に関しては喋らすと止まりませんが、普段は持ってる知識を前に出す事は無いです。「知っていても、言わないだけ」。そもそも言う必要が無いし他人に知ってもらう必要もないので。 そんなミュージカル映画のほとんどは現在、AppleMusicやSpotifyなどの定額制音楽サービスでも聴けますが、やっぱ物理的に入手したいって思っちゃうんですよね。そんな話を同僚と話していたら、ココに連れてこられました。

ハリウッドのはずれ、少々さびれた通りの交差点にポツンと佇むノスタルジックな外観の店舗。煤け、修繕されることもなくヒビ割れた外壁。 「アメーバ」と云う、ロサンゼルスの老舗レコードショップ。 杖をついてベンチに腰を下ろす老人のように、ずっとこの場所で時代に逆らい、そして時代を見つめながら、誰にも振り向かれること無く、まるでなにかのサインを発信するように、ネオンライトの看板は明滅を繰り返していました。

店内に入ると懐かしい匂いがしました。 シンナーとも違う、甘く酸っぱいワックスのような石油化合物の匂い。小さい頃、買ってきたCDのキャラメル包装を破った時にフワッと広がるあの匂いと、古着屋に大量に詰まれたTシャツに染み付いたあの匂いが混ざったような、記憶と景色に結びついた匂い。忘れていたことすら忘れていた、今は嗅ぐことが無い、懐かしい匂い。

ふと気がつくと、店内を周回していました。4周?5周かも知れません。1周目はひたすらトレイを、2周目は壁面にびっしりと貼られたポスターを片っ端から、躓きながら眺めていました。3周目からゴソゴソと棚を引っ掻き回しては、突然思い出したように裏の棚に移動を繰り返し、思い出と記憶の神経衰弱を繰り返しては喜びながら物色を繰り返しました。 そのうち2階への階段に気付き、駆け上り、その踊り場から観た光景を写真に収めました。皆さんも御覧ください。

多くは語りません。 この光景を観て、皆さんは何を思いましたか?感じましたか?

僕はこの光景を、この時代にもう一度観ることが出来るなんて思っていませんでした。

これが終わりゆく景色でしょうか。 これが忘れ去られた景色なのでしょうか。

感じることは人それぞれだと思います。それぞれの思いで構わないので、少しでも長く、この景色を観ていてください。 僕の目にはただただ、とても力強く、そして美しい風景でした。

【料理の別人ハリウッド編・4月のリポート】

・ハリウッドと日本の往復が頻繁になってきました。もう8往復?9往復?パスポートの捺印がいっぱいになる人生なんて想像もしなかった、というか大嫌いな飛行機(極度の高所恐怖症)に、こんなにも乗る人生になるなんて思わなかった。一番死にそうになるのが、上空でトイレに行くため立ってる時です。トイレの前に並んでいると、その横に見える乗降ドアを見て恐怖でクラクラするのがフェイズ1。足元から伝うエンジンの振動を意識し始めてフェイズ2。自分が高度1万メートルに立っていると妄想が始まりフェイズ3。最終形態は「言葉なき発狂」です。降ろしてくれ、いいから降ろしてくれ頼むって心の中で叫びながら錯乱が始まります。高所恐怖症なら判って下さるかと。要は「妄想して怖くなる」のです。ほんと病気ですよ疾患ですよ高所恐怖症って。乱気流で機体が乱高下なんかした日には機長の胸ぐらを掴みに行きたくなります。ちなみですが、座って映画観てるとあんまし怖くないです。なんでなんでしょうね。判ったら苦労しません。それが高所恐怖症。

・ハリウッドの企業が主催するコンプライアンスセミナーに参加。内容のほとんどが秘密保持に関する講義でした。SNSの成熟と共に、NDA(秘密保持契約)を雇用主→従業員で締結する事が多くなりました。僕も業務上でNDAを結んでいるというのは以前のブログで書きました。NDAに違反した行為と認定されると多額の損害賠償を支払うことに。クライアントに関しては口外出来ないのがほとんど。細心の注意を日々払っている・・・はずなのに、セミナーの筆記テストは「お前もう国に帰れレベル」でした。ちぬ。 ・日本ではよくある「喋っちゃって炎上」ですがアレ、日本人が突出して多いそうです。それ聴いて何とも言えない気持ちになりました。アメリカでは殆ど無いそうですが、起こった場合は骨どころか灰も残らないくらいに燃えるそうです。恐ろしい。

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