コロナ禍で半壊したのはエンタメ業界の…というお話【前編】
ジェッジジョンソン藤戸です。二年半ぶり、ようやくブログ再開です。
いや、書いてたんですけど公開前に某所のお偉いさんの検閲に引っ掛かり、何度も添削されてるうちに「あぁ今じゃ無いな、こういう事書くの」と考えて保留してました。
コロナフィーバーも早3年目。全数把握を停止したり、なぁなぁの規制に切り替えて、社会全体が「知らない誰かの未来のために、自分の未来や生活や人生を差し出す不条理はもうゴメンだ」という風潮になったじゃないですか。誰もが砂を掛けていた不条理を善しとする人が少なくなってきた。コロナ禍当初、ライヴハウスに思い違いの正義で張り紙をした人間、いまでも張り紙をするのかな?そういう流れになってきましたね。
二年前、停止前のブログで書いたように僕は業界の「政治側」に、期間限定で回りました。音楽・ゲーム・広告・ITのすべてを実務経験し、繋がりのある数少ない人間として、業界のお偉いさんの参謀として(命令なので…)異業種を結びつけたり、淘汰されそうな「村」にITという電線を張りに向かったり、「月の裏側」で闘う人たちと行動を共にしていました。いや、巻き込まれたというべきでしょう。ただ、半年の筈が2年以上、実際いまもお手伝いを並行して続けています。パンデミックがここまで続くなんて誰も予想出来なかった。そういう事実です。より合理的な社会に加速した側面もありますが。
矢沢永吉さん事務所の社長・T氏(現・某プレイガイドの偉い人)は、お偉いさんの中でも相当以前から行動を共にさせて頂いて、T社長の数々の密命を遂行(もう言い方がバンドマンじゃない)してきましたが、コロナ禍でT社長にお願いし、ライヴハウスや現場に直接足を運んで下さり、数々のご提案やアドバイス、なによりT社長自ら苦境の現場と繋がってくださいました。社長自身が矢沢永吉さんと共に30年以上も現場に立ち続けていたからこそ、なのかも知れません。下北沢CLUB Queの統括者でありライヴハウスシーンの御意見番・二位さんと(お互いに名前を知っていたけど)初対面の中華料理屋、とても楽しそうでした。様々な御提案と御尽力、この場を借りて御礼を申し上げます。
そして引き続き、T社長の懐刀(?)として月の裏側で暗躍しますよぇぇもう腹をくくりましたよT社長もぅなんなりとお申し付け下さい120歳までバンドマンと作曲家とプロデューサーを続けますけどね!!!!!
本題。
2020年・21年、「エンタメ業界は死ぬ、消える、絶滅する」と言われながら、現在2022年のエンタメ界隈は皆様の眼にどう映っていますか?多くの日本国民が当初のエンタメ業界の苦境を忘れているくらい、コンサートやイベントは以前の状況に戻ってきている、そう映っているのではないでしょうか。本ブログではメディアに取り上げられにくい「数字」を踏まえ、実情をお伝えし、かつ残して置こうと思います。言い回しが相当辛辣な箇所もありますが何卒ご容赦下さい。
①エンタメ業界の売上はどうなっているの?
チケットぴあの「ぴあ総研」が昨年2021年9月の時点で公開した統計・推移表があります。こういうのがあるのにメディアではなかなか取り上げられないし知られていない。なによりデータを見ない・使わないエンタメのプロダクションが相当数居るんですね。1年後の現在、予測数値は上方修正と加味して御説明します。
※「音楽」は音楽公演関連、「ステージ」は演劇などの分類です。
※上記グラフにオンライン配信市場は含まれていません。超重要です。後述します。
コロナ開幕初年度は実に売上82%マイナス。約5,000億円がエンタメ以外に流れている、貯蓄に回るという事です。翌年2021年は50%マイナスまで回復。そして2022年は20%マイナス以内に。
回復、というコロナ直前の市場規模を参考にする視点で引用しがちですが、もう一つの視点があります。例えば2021年、これを過去実績年と比較すると、2010年の実績(震災前)と同水準なんですね。この10年でCDなどパッケージ商品が売れなくなり、収益モデルはコンサートやイベントなどの興行にシフトしたんですね。シフトした部分の収益源「興行収入」が吹っ飛んだという事です。そして大事なのは10年でエンタメ産業従事者の人口は横ばいで、従事者の平均所得も横ばいなんですね。話が広くなるので詳しくは総務省統計局にグラフが載っていますので興味ある方は拝見して下さい。単純に企業・事業部単位で増加した収益が消し飛んだという事です。大手事業部や事務所は過去実績を踏まえたリスクヘッジを行うので「きっついけど倒産には至らない」という事実です。きっついのは吹き飛んだ興行収入に携わる二次従事者(コンサート制作、例えば照明さんや大道具さんetc…)や、中小規模の芸能事務所、実演寄りのタレントさん達です。
エンタメが死にそう、音楽業界が死にそう、包括してそんな単語が飛び交いましたが実際はエンタメが死ぬことは無いです。死にそうなのは余剰分に関わっていた従事者です。余剰分をカットして業界は続いていくのです。
娯楽産業に関わる従事者は日本国民全体のわずか3%未満。100人中3人。30人学級クラスだったら0人か1人居ればという規模です。多勢にとって正直どうでもいい人数です。でも、だからこそ「業界ひとくくりで死にそう」ではなく「その業界の、どこのだれが死にそう」なのか、97人に知って欲しいのです。
②ライヴ配信の推移はどうなの?
上記も「ぴあ総研」の、コロナ状況下での公開統計です。今後はライヴ配信を行う事務所や実演者、その課金年齢層も統計を取るべき最重要カテゴリと考えます。概算推移は上昇傾向であるけれど、思っていたより上昇率が低いと思いませんか?これは純粋に、配信を導入する事業部・事務所・そしてアーティストが思ったより伸びなかった事に起因します。そうなんです、実は大小問わず、特に大手事務所とそのアーティストはライヴ配信を導入していないのです。2022年になってようやく通常観劇と並行して導入する事が増えましたが、公演数の分母で見るとわずか数%に満たない。前述のように政治的勅命で僕は各所にライヴ配信の導入を促すこともありましたが、怒られるの前提でぶっちゃけ言いますけど、相当な否定と抵抗に遭いました。
【事業部・事務所様の発言例】
「お前なに言ってんの?儲かる訳無いじゃん」
「やっぱライヴは生だよね」
「設備がさっぱり判りませーん」
もうね、潰れていいです。淘汰されてしまえ。上記のこだわりの発言をして良いのはアーティストやタレントです。アンタ達が言うセリフじゃない。アンタらの責務は「関わる人間の収益を確保し、生み出す事」です。判らないで済ますな、学んでくれ。少しでも収益の可能性を模索するのがアンタ達の使命だ。従来のビジネスモデルの上にあぐらをかかないでくれ。事業やタレントの規模に関わらず「発信する」事が重要で、これは伝える手段が変わっただけの話なのに多くが導入しない。にも関わらず辛い死にそうとか発言する業界某所の記事を見ると溜息が出ます。死にそうなのは上じゃない、現場です。ホントどの業界や組織もコレですね。
後編は僕の育ったライヴ界隈、その現場にフォーカスします。
その現場こそ、余剰分の最たる場所なのです。悔しいけど事実です。
どんだけ死んだか、どんだけ消えたのか。残酷だけれど伝えたい、残したい事実があります。