音楽のお話

コロナ禍で半壊したのはエンタメ業界の…というお話【後編】

バンド藤戸じゅにあの料理の別人ジェッジジョンソン
JETZE.NET

ジェッジジョンソン藤戸です。後編です。前編に続き、今回は僕の生まれ育ったライヴ界隈にフォーカスしてお話します。往年の毒舌で記述もあるかと思います(※注)。ご容赦下さい。

(※注)ジェッジジョンソンの正式名はブリスタリング・ザ・ジェッジジョンソン(BLISTERING THE JETZEJOHNSON)。「ブリスタリング」とは「毒舌」という意味です。

ライヴ界隈はどうなったの?

前編で「エンタメ業界は死んでないし死ぬことは無いです。死ぬのは余剰分の人たちです」とお話しました。その余剰分が多く集まるのがライヴ界隈。ここに分類されるのはざっくりと

・大手事務所のような宣伝力を持たないアーティスト
・ライヴハウス界隈
・メジャーデビューを目指す人(アイドルやグループ含む)
・上記の人を抱える芸能/音楽事務所

インディーは実力の世界、メジャーは宣伝力の世界。一般の人はどうでも良いので単純な「くくり」で一緒くたにされがちだけど、同業種でも全く別です。そこのお話です。

①ライヴが収益軸のバンド/グループが約2割消滅した

あなたの好きなバンド/グループが10組あったとしたら、そのうち2組はもう既に消滅しています。「しています」という言い方は、実際公言していないけど今後、活動すること無くフェイドアウトする方々が多いという事です。ホール会場やドル箱(アイドルグループがよく使用するライヴハウスの事)のスケジュール表を見ると瞭然です。例えば好きなグループを思い出して、公式サイトに飛んでLIVE情報をチェックしてみて下さい。そのグループが今年2022年に活動予定が無かったら、それはもう「そういうこと」です。僕も仲間や先輩後輩で「ステージを降りてしまった」方々が多いです。特にライヴで収益を得ていた、いわゆる「ワンマンが開催出来る人たち」です。あと、弾き語りで全国を回っていたのが出来なくなり…という仲間たちです。

この件に併せて、僕から言いたいこと、書き残しておきたいことがあります。

生活のため余儀なくステージを降りた仲間もいますが、「(自称)ファンの、思い違い極まりない発言や行動によって精神的に崩れ、心が折れて辞めた」仲間が相当数いるという事実です。具体例を挙げるなら、公演延期によるチケット払い戻し関連です。コロナ開幕当初、非常に多くの公演/イベントが延期や中止に追い込まれました。払い戻しで各プレイガイドのコールセンターが地獄だったのは想像に余りますが、チケット販売管理をアーティスト個人で行っているグループなどはもう…筆舌に尽くしがたいです。そのうえ「払い戻し金を今すぐ振り込んで下さい」や「手数料はそっち負担ですよね?」「振替公演は当然、新規発券者より優先入場ですよね?」など、身勝手な要求をする(自称)ファンが居るんですよ、実在するんですよ、僕も相談されるまで、メールを拝見するまでそんな人種が存在するなんて思っていなかった。しかも公演の中にはライヴハウスやイベンターなど第三者主催も多く、グループにそんな返金対応など出来ないケースも有るのです。

更に追い打ちで、多くの主催が一斉に振替を行ったため、今度は振替先の日程と会場の奪い合いという、地獄を越えたカオスの状況だったのです。もう心労でしか無いです。

そこに極めつけの一撃で、延期のゴタゴタをどうにか乗り切り振替公演を設定し無事に公演を完遂した矢先、「払い戻しが設定されていないの、どういうことですか?」と質問してくる(自称)ファンが相当数居たそうです。公演が行われている、もしくは行われるのに払い戻し?返金とは、公演が正常に行われない場合の保障対応です。その日が急遽「蔓延防止」になっても、公演を行うグループも居ます。それを見越してほとんどのファンの方々は「自分の判断で」チケットを買いますよね。でもそうでない人が、公演が行われているのに、コロナを免罪符と思い違いして「(自分の判断で買ってるのに)自分は行かないからチケット代返して」と発狂したようにグループに食って掛かる(自称)ファンがいるのです。僕が当該グループならライヴ活動辞めます。もう心が折れます。やってらんない。こういう「ファンという言葉を振り回す身勝手な人」によって苦しんだグループが相当数居るのが事実です。そして、これが理由で辞めた人は少なくない、とお伝え致します。

②多くのライヴハウスは残存した。消えたのは…。

皆が思っているほどライヴハウスは潰れなかった。それは裏側で、ものすごい努力と尽力があったんです。僕も含めた多くの方々が、悔しくて泣きながら手を握り合って踏みとどまって助け合ったんです。最小限に留まるよう、血涙しながら咆哮しながら耐え抜いたんです。下北沢CLUB Queが手塩にかけた兄弟店・代々木Zher the Zoo。どちらを取るか、どちらを残すかなんて決められないし決めたくも無かったでしょう。多くの方々の努力で最小限に抑えられたのです。てゆうかですね、ライヴハウスも組合や事業団体を結成したほうが良いんですよ。僕はそれをご提案させて頂きました。東日本大震災で痛い目に遭ってるはずなのに。これからのためにライヴハウス界隈の著名人が音頭を取ってですね、抵抗勢力をグレッチでぶっtあ、誰か来ました控えます。

ライヴハウスの収益形態にも種類があります。①アーティストの単独公演(ワンマン)の会場使用料のケース、②駆け出しグループがライヴハウスにチケット15-30枚の販売金額分のノルマ(保証金)を払うケース、そして③大手事務所やレーベルが、所属グループのお披露目(いわゆるショーケース)や施策戦略(いわゆる企画モノ。叩き上げに見せる為というアレ)で借り上げるケースなどなど。

閉店したは①か③が多いです。ぶっちゃけますけど都市圏のライヴハウスは②が殆どなので、演奏自粛にならない限りグループの動員数に左右されない収入があるので、どう考えても潰れることは無いんですね。それでも潰れたライヴハウスはありますが、大変恐縮ですがそもそもの経営体質に問題がありましたよね。コロナは皆に等しく、上からプレスを掛けました。コロナのせいにしている経営者、あなたは自分の性能に向き合ったほうが良い。

今後の問題は、ライヴを実演する側の人口が減ってきている事です。目指す人が少なくなっているのです。これはアーティストの発信の手段が変化したことが起因です。ネット配信でも、なにより個人でも作品や演奏の発信ができるご時世、ライヴハウスやホールの意義を再定義する必要があります。あと、ライヴ配信に対応するライヴハウス/ホールが少なすぎる。対応できることも今後の要素のひとつです。

③☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓
④☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓

③と④は絶対にブログに書くなと忠告されました(ぅぉ)。余談ですが或る「お偉いさん」に呑みの席で

氏:「藤戸さ、よく『東京湾に沈める』『東京湾に浮かぶ』って言うじゃん。違い判る?」
僕:「わかりません。なんですか」
氏:「沈める時はバレたくない時、浮かぶ時は見せしめの時だ」

あ、もう大丈夫です自分の立場は理解しております!!!!!!!

⑤淘汰の先に残るのは…

時代に対応する、って何でしょうね。業界も、実演者も、そしてユーザーも淘汰されて巡るのが「時代」だと僕は考えています。

余談ですが、このパンデミックで改めて再確認した事があります。それは、いつの時代も「宣伝」「情報」こそすべての最上流だという事です。

ヒーローは宣伝によって作られる、と教えてくれた役員が居ました。野球を普及させるため、その中で英雄を作り上げ、憧れを抱かせ、そしてテレビ(メディア)という広告ツールを使い、野球という商品を広げる。野球に限らず、どのコンテンツでもプロダクトでも「仕込む」施策の定石です。全ては宣伝によって認知されて行くという話です。

人は無関心・無知であるほど情報を鵜呑みに、脊髄反射に傾倒します。コロナ開幕当初、エンタメに繋がるイベントは全て「諸悪の根源」でした。情報が確定せず錯綜する中で、どれだけの人が踊らされたのか。2022年、エンタメ業界は「諸悪の根源」でしょうか。業界を振り回したのは、窮地に陥れたのは誰でしょうか。

陰謀論を信じる人達は、論拠と反証すら理解できずに否定する。
あなたは、どうですか?
少しでも多くの人達が、エンターテイメントを必要として下さいますよう、
心よりお願い申し上げます。

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